スポーツとしてのゴルフ
高度成長期、狭くて山がちな日本の国土に多くのゴルフ場が造成された。英米の伝統的なゴルフ・クラブをモデルとしたカントリー・クラブの形を取り、クラブの会員となることが社会的ステータスとなった。バブルの時代には他の有価証券同様に、ゴルフ会員券も高騰し、これを見込んだゴルフ場造成も全国で行われた。自然保護団体等からは環境破壊の元凶として批判も浴びた。
日本では、これまでゴルフといえば、主に男性が仕事上の付き合い、接待、社交のために勤しむ「仕事としてのゴルフ」だった。休日も、男は「仕事の一環」として、ゴルフの打ち放しやゴルフ場に足を運む姿があった。日本式経営の大黒柱として終身雇用が世間の常識として信じられていた時代、夫は休日も会社での出世に貢献する活動としてゴルフに勤しむことで家族の大黒柱としての手ごたえを得つつ、激しい出世競争での不安解消としていた。妻は休日も家族をかえりみない夫をなじりつつ、仕事の一環を口実にストレス解消し、家庭に当たったり介入したりしてこない夫のゴルフを仕方ないものと認めていた。
バブルが崩壊して長いデフレの時代となり、日本的終身雇用神話も崩壊した。ゴルフ会員券発行の収入や会員のプレー代でゴルフ場経営を支えることは難しくなり、会員の配偶者、家族や友人、果ては一般人にもプレーを開放し、会員とのプレー代の差もなくなって低価格化が進んだ。名門クラブといえども、時代の急激な変化の下、薄利多売の一般開放化を余儀なくされている。
都市の近郊の自然いっぱいの中、低コストで、ほぼ1日中、数人と楽しむことができるスポーツとしてゴルフの人気が上がっている。男女雇用参画社会で働く女性が増え、晩婚化も手伝って、ゴルフを楽しむ女性が増えている。すると今度はこうした女性とラウンドしたい男性がゴルフ場に戻り、主婦も夫と一緒から友人と一緒にラウンドしたり、託児所や子供の遊び場付きのゴルフ場で子供を預かってもらってプレーしたり、ゴルフ場の温泉を楽しんだり、・・・欧米のスポーツとしてのゴルフがより日本化して、レジャー施設化してきている。
お隣の韓国人、中国人をはじめとしたアジア人もこうしたサービスは大好きで、今後、ICT等を駆使したマーケティング次第では、日本的総合レジャー施設として観光スポットともなり得る。男性だけでなく女性、仕事だけでなく家庭、日本人だけでなくアジア人をはじめとした外国人と潜在的な顧客が広がる中、ゴルフに関しても日本人の情報創造発信力が問われる時代となっている。
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