枝を伐って根を枯らす
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正面に三角屋根

この町の従来の繁華街である東口には、正面に三角屋根を建ち上げ、その内側が半円形のアーチ型をしたガラス窓になっていて形ばかりのホールに外の光を投げかけている古い駅舎があった。今もある。その改札口を抜けると、上りと下りの二つの線路と二本の私鉄のホームの下をくぐる、狭い地下道になる。暗く、湿って陰気な地下道をまっすぐに進んでいくと突き当たりに小さな階段があり、それを上っていくと駅の反対側の出口になる。こちらには改札口がひとつしかなく、駅員がひとり、手持ちぶさたな表情で座っているか、どうかするとその駅員すらいないことがあった。
 これが西口だった。
 西口は寂しかった。
 寂しい西口を出ると、そこは広場、というよりもちょっと大きな空き地のようになっていて、崩された裏山が赤土をむき出しにして迫ってくる谷間に、屋台とたいして変わらない、実際もとはみんな屋台だったというバーや一杯飲み屋のバラック建築が数軒並んでいて、職業安定所でその日の仕事にありつけなかった労務者たちが、昼間から酒を飲んでいた。町に競輪がある時期は、その男たちの姿が増える……。そんな、長く続いた西口の姿が、ある日、一挙に変わった。
 駅の姿をすっぽりと覆っていた工事用のテントがその日いっせいに取り払われ、そこが何年かぶりに、工事現場から駅に戻った。テントに覆われるまでとはまったく違った姿になって。
 狭かった地下道の空間が、まったく別のものに変わっていた。
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