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胃カメラとの闘い

胃カメラを飲んだ経験のある方のうち、かなりの方は、苦手だったり、死ぬ思いをしたりした経験があると思う。わたしも相当苦手だ。

何が苦しいか。舌の根本をチューブが当たる時の嘔吐感、あとは食道、胃、十二指腸とチューブが通る際の異物感、その際、洗浄液や空気が送り込まれる際の違和感などで、それを防ぐために事前に麻酔液を喉や鼻に溜めて2分我慢するのも嫌な場面だ。ただ、何より苦しいのは、こうした不快な感覚が生まれて、そこから逃げられなくなるのではないか、という恐怖感ではなかろうか。例えば、嘔吐感も、自分が気持ち悪いと思えば、その瞬間にから嘔吐する指令が出され、それが出来ない現実との間で恐怖感が生まれてしまう。

こうなると、胃カメラとの闘いでなく、胃カメラという不可避の現実と直面した、自分との闘いとなる。これをどう乗り越えるか。伝統的な日本人の考え方は、精神力でこれを乗り越えようというものだったと思う。

しかし、人間としての働きが正常であれば、舌の根本に人工的なチューブが当たればに嘔吐感を伝えて嘔吐の動きが出るものだ。だから、これを人工的な麻酔液で防ぐのは勿論、カメラの精度が上がってチューブが細くなったり、鼻から入れたりと薬や医学、科学技術の進歩を最大限駆使した方法を選択したもらい、患者もモニターを見て自分の消化管の中を旅する気分を味わってもらい、その分、定期的に検査を受けてもらうことは、医療サービスを提供する医者としてすべき仕事であり、これを受ける患者として自然な行為だと思う。

昨日は、自然梅雨空や晴間を自然に心に沁み入らせる心境を書いたが、人工的な科学技術の粋を集めた医療現場では徹底的に人工的な粋に身を預ける心境がいいのではないか。何か当たり前のことのようで、案外難しく、非常に重要な心境を体で覚えた気がした。

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